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2026.03.07
#インタビュー

Interviews Vol.12 Cul de Sac – JAPON(後編)

青森ヒバ×陶磁器
産地を超えて高め合うものづくり

青森ヒバの魅力と可能性を世界へと発信するブランド「Cul de Sac – JAPON(カルデサックジャポン)」。扱う素材こそ違いますが、「中外陶園」とは共通する点も多く、前編ではCul de Sac – JAPONの代表・村口実姉子さんと中外陶園の鈴木社長に、地域の資源や技術に根ざしたものづくりへの思いについて語ってもらいました。後編は、2025年に誕生したオリジナルプロダクト「香立て」の制作秘話から、STUDIO 894で開催する企画展について詳しくお話をうかがいました。

小さな香立てに凝縮した、ブランドの思いと技術

―2025年9月には、新たな取り組みとして「香立て」も誕生しました。こちらの制作秘話についてお聞かせください。

村口実姉子さん(以下、村口) 以前から、中外陶園さんには「私たちの希望するかたちもつくれますか?」と相談していたんです。それで、ブランドのアイコンである「UNKNOWN(アンノウン)」シリーズのスツールを模した「香立て」をつくりたいとお話しました。

中外陶園・鈴木(以下、鈴木) 私も「UNKNOWN」のスツールを愛用しているので、お話をいただいたときは「ついにこれをつくらせてもらえるのか!」と、一ファンとして嬉しかったです(笑)。

村口 (笑)。でも、いざ試作が始まると、このスツールの特徴である4脚の形状を陶磁器で再現することが、技術的に難しかったんですよね。

鈴木 ええ。実は、村口さんから届いた原型をそのまま再現しようとすると、型の構造が複雑になりすぎて量産化が難しくなる可能性がありました。そこで、焼成時の土の収縮や動きを計算し、焼き上がったときに理想のかたちになるよう、原型の段階から細かな調整を重ねました。手のひらに乗るほどの小さなものですが、この香立てには中外陶園の技術が随所に詰まっているんです。だから、Cul de Sac – JAPONさんのファンの方々にも、きっと納得していただける仕上がりになったのではないかと思います。

青森ヒバの魅力を身近に体験できる貴重な企画展

―2024年、2025年に、STUDIO 894でCul de Sac – JAPONの企画展を開催しました。それぞれどのような思いを込められましたか?

村口 2024年の「想像する森」では、ギャラリー内にヒバチップを敷き詰め、そこに樹齢100年を越える青森ヒバの丸太のスツールを置きました。壁に私の実家付近の映像を投影し、川のせせらぎや鳥の鳴き声を流すなど、五感で“青森ヒバの森”を体感できる空間を演出しました。青森ヒバをまだ知らない方にも、その生命力を肌で感じてほしいという思いがありました。

鈴木 陶磁器以外の企画展を行うのは、STUDIO 894にとって初めての試みでしたが、大きな反響をいただきました。なかでも「ヒバの香りがいい」と空間そのものを喜んでいただいたのが、とても印象に残っています。また、企画展に合わせて開催したPOP UPイベントや、箸づくりのワークショップも大盛況でした。

村口 実は、私たちがワークショップを開催したのは、STUDIO 894が初めてだったんです。参加されたお客さまの楽しそうな姿を見て、その後、自社でも開催するようになりました。ものづくりだけでなく、多方面で協業の相乗効果が生まれています。

鈴木 それは嬉しいです。2025年の企画展「メタモルフォーゼ展 –変化とその役割について–」は、青森ヒバが育つまでの時間の重みが伝わる内容でしたよね。

村口 そうですね。青森ヒバが用途に合わせてかたちを変えていく姿を可視化しました。これは、貴重な資源を一切無駄にしないという、私たちの姿勢をお伝えしたかったんです。また、会場では、1本のヒバが長い年月をかけて成長する過程が分かるように、年輪を年表に見立てた展示を行いました。

―2026年3月7日(土)から、3回目となる企画展「眠り展 ~健やかで良質な睡眠へのアプローチ~」が始まります。今回はどのような内容になりますか?

村口 今回のテーマは「眠り」です。ヒバのチップを敷き詰めたギャラリーの中央に、糸状に細長く削り出したヒバのベッドを設置します。皆さんには、まるでヒバの森の中のような香りに満ちた空間で、心と体が自然とほどけ、眠りへと誘われる感覚を体験していただきたいと思っています。

鈴木 私がこれまでの企画展を通じて強く感じているのは、日本古来の銘木である青森ヒバを、現代のライフスタイルに寄り添うプロダクトへと昇華させる、Cul de Sac – JAPONさんの圧倒的なデザインの力です。それは、私たちが目指すものづくりと深く重なります。今回の企画展においても、お客さまにはぜひそのデザインの力を感じてほしいと思います。また、STUDIO 894がこの展示を行う意義は、Cul de Sac – JAPONさんのクリエイションを通して、多くの方にこれからのものづくりの可能性を体感していただくことだと考えています。

―会期中はワークショップやPOP UPイベントも予定されているそうですね。

村口 はい。今回は、青森ヒバの特性を備えた繊維「Filhiba®(フィリバ)」の布を用い、枕づくりを体験していただきます。また、今回もPOP UPイベントを同時開催します。ヒバチップの詰め放題やガチャガチャなど、大人から子どもまで青森ヒバを身近に感じてもらえるコンテンツを用意しています。

共通点は楽しみながら真摯に取り組むものづくり

―改めて、お互いのものづくりをどのように見ていますか?

村口 中外陶園さんのものづくりに真摯に取り組む姿には、いつも刺激を受けています。同時に、楽しみながら新しいものづくりに携わっている姿は、私たちとの共通点でもあるのかなと感じています。

鈴木 Cul de Sac – JAPONさんとの協業を通じて、これまで瀬戸焼に触れる機会が少なかった方々にも、私たちのものづくりや瀬戸のことを知っていただける。それを私たちはとても嬉しく思っています。村口さんは、単に洗練されたプロダクトをつくるだけでなく、その背景にある“素材の価値”を正しく伝えられており、その点もとても尊敬しています。また、スタッフの皆さんが自社商品を本当に好きで、ご自身の言葉でお客さまに魅力を語れる点も素晴らしいですよね。つくり手の思いをしっかりお客さまに“伝える力”は、果たして、どこから来るのだろうと、いつも興味深く拝見しています。

村口 弊社では、入社したらまず全員が接客からスタートするんです。お客さまの本音を聞くことは、つくり手にとって何より大切ですから。また、青森ヒバは“生きもの”のようなものなので、脂でシミになったり、色移りしたりといったデメリットもあります。私たちはそれらを隠さずに丁寧に説明し、納得されたうえで手に取ってもらいたい。それは青森ヒバを誤解してほしくないからですし、ものづくりに携わる者としての誠意だと考えています。

―今後、Cul de Sac – JAPONとしてどのような展開を考えていますか?

村口 ブランド立ち上げ当初から準備を進めてきた海外展開、そして私たちの原点であるアパレルにさらに力を注いでいきたいと思っています。特に、海外の方々にもっと青森ヒバの魅力を届けたいので、私たちにできる限りの挑戦をしていきたいと考えています。


Cul de Sac – JAPON

主に建築資材の加工過程で生じる青森ヒバの端材を利用し、持続可能なものづくりを追求するブランド。素材となる青森ヒバは、日本で唯一「ヒノキチオール」や「β-ドラブリン」を豊富に含み、優れた抗菌・防虫・消臭効果、そして深いリラックス効果をもたらす。世界でも稀なこの特性を活かし、現代のライフスタイルに寄り添うデザイン性の高いプロダクトを提案しており、その独創的なアプローチは国内外から注目を集めている。

【公式サイト】
https://store.culdesac.jp
Instagram @culdesac.japon