⼀覧にもどる
2025.09.01
#コラボレーション

Interviews Vol.09 unpisさん

平面から飛び出した、愛らしい立体アートの世界

イラストレーター、unpisさんの作品は、シンプルながら大胆な描線と、見る人をひきつける洗練された色彩が特徴です。それらのイラストは日々の暮らしに自然に溶け込み、私たちの心をポジティブにする不思議な魅力にあふれています。今回、unpisさんと中外陶園のコラボレーションが実現し、これまで平面の中で無限の表情を見せてきたunpisさんのイラストが「立体」の世界へと飛び出しました。そこで、新たな挑戦を終えたunpisさんに、自身のイラストの世界観を見事に再現した立体作品への思いをお聞きしました。

諦めていた立体作品への挑戦

―今回、unpisさんのイラストが立体作品になりました。まずは、このオファーを受けたときの率直な気持ちをお聞かせください。

以前から立体作品には興味があったのですが、イラストの線のように手作業で立体化するにはコントロールが難しくて……。正直、イラストを立体化するのは無理かなと半ば諦めていたんです。だから、お話をいただいたときはとても嬉しかったですね。

―今回の立体作品は犬と猫になりましたが、この2種を選ばれたのはなぜですか?

瀬戸は招き猫の産地ということもあり、普段からイラストの中に登場させている犬や猫を素直に立体にしてみようと思いました。中外陶園には、最初に前面と側面、背面のイラストを描いて渡し、『なるべくイラストの線のイメージに近づけてほしい』とお願いしました。

―ご自身の中でも課題だった立体の難しさは、どのようにクリアされたのですか?

そうですね。たとえば、正面と側面の見え方の違いや、顔や耳のつき方、尻尾の角度や先端の丸みなど、どうしても矛盾が生じる部分が出てきてしまうものです。私の方で気になった部分は修正の指示を出し、その都度、調整してもらいました。そのやりとりを経て、最終的に中外陶園のプロの技で、どこから見ても破綻のない理想の形に仕上げてもらいました。

当初の予想を上回る完成度に心弾む

―手のひらに乗るくらいのサイズがまたかわいらしいのですが、サイズへのこだわりもありましたか?

私はフィギュアやオブジェなどを集めるのが好きなので、飾りやすさは意識しました。自宅のフィギュアの隣に、プリントした図面をつなぎ合わせた箱状のものを置いて、実際のサイズ感は確認しました。

―色や柄への要望はありましたか?

色選びはかなり悩みました。イラストのカラーリングを踏襲したいという思いと、ご自身のペットに近い色を選びたい方、そしてニュートラルに色を選びたい方、この3つがぶつかり合い、絞り込むのが本当に大変でした。そんな中、軽い気持ちで提案したブチ柄が想像以上にかわいらしくて(笑)。これは絶対に採用してもらおうと思いました。

―初めて完成した作品をご覧になったときの気持ちを教えてください。

イラストがそのまま立ち上がったようで、すごく嬉しかったですね。自宅のフィギュアの中に置いてみたのですが、そこに自分の作ったものがあることに不思議な感覚を覚えました(笑)。

―特に気に入っている部分はありますか?

すべて気に入っていますが、しいて挙げるなら猫の滑らかな身体でしょうか。私は猫が威嚇しているようなポーズがとても好きで、イラストでもよく描くのですが、それが見事に再現されていました。あとは、頭、胴、腕、足といったパーツを組み合わせたような犬のフォルムも、ちょろっと出ている舌もイメージ通りでした。犬と猫、それぞれの立体の違いがきちんと表現できたので、本当に満足しています。

初挑戦の呉須が新たな魅力を開花

―9月1日(月)から10月26日(日)まで、STUDIO 894でunpis 個展「BowWow Meow」が開催されますが、内容も盛りだくさんだそうですね。

今回の個展では立体作品を中心に、制作過程が分かるスケッチや型なども展示します。私自身、これほど犬や猫に特化した個展は初めてなので、そこはもう振り切って、描き下ろしの原画も犬や猫をメインに構成する予定です。ほかにもマグカップや顔型の豆皿なども並びますし、10月4日(土)は事前予約制のトークイベントや、皆さんのご希望の絵を磁器製タイルに描く時間もご用意しています。

―磁器製タイルに染付した作品も展示されるとお聞きしました。

はい。15㎝角のタイル9枚を組み合わせて1枚の絵にしました。これは陶磁器の「割れる」という特性をイメージしたもので、1枚の絵からバラバラになったタイルが、いろいろな場所で飾られたら面白いかなと思ったんです。また、この9枚のタイルが一堂に集結するのはSTUDIO 894だけなので、わざわざ足を運んでいただくことへの付加価値を付けたいという思いもありました。

―呉須での染付はいかがでしたか?

初めて呉須を扱ったのですが、普段使っているアクリル絵の具と違って、乾いている状態でも触れると落ちたり、伸びたりしてしまうので、本当に難しかったです。だから、描くときはタイルの上に小指だけを置き、こすらないように、線がぶれないように注意しました。

―今回の犬や猫の立体作品にも染付されたのですね。

はい。犬や猫が好きそうなものや、ハッピーな気分になれるものをモチーフに描きました。どれも1点ものなのですが、私もとても気に入っています。

立体への情熱、コラボでさらに強く

―今回のコラボレーションを経て、今後の創作活動にプラスになったことはありますか?

これまでもプロダクト制作は行ってきましたが、今回、中外陶園と深く連携させてもらったことで、プロの方たちとの協業や、自分では扱えない素材にイラストを展開することの面白さを強く感じました。また、イラストがこんなにも美しく立体化できることが分かり、今後は犬猫以外のモチーフも作ってみたいですし、立体ならではのアイデアをもっと盛り込んでみたいです。今回の経験を経て、より一層、立体作品への思いが強くなりました。

―最後に今回の立体作品が皆さんのどのような存在になったら嬉しいですか?

言葉を交わすことはなくても、ふと目に留めたり、そっと手に取ったりすることで、皆さんの暮らしに自然に寄り添う、大切な友達のような存在になったら嬉しいですね。


unpis

福島県いわき市生まれ。広告、書籍、パッケージなどのイラストを中心に様々な分野で活動中。ニュートラルな線とかたち、少しウフフとなる表現を心がけている。

Instagram:@wa_unpis

コラボレーション商品はこちらから 
中外陶園オンラインストア

unpis 個展「BowWow Meow」詳細はこちらから
9/1(月)~10/26(日)開催 unpis 個展「BowWow Meow」