Interviews Vol.01 てらおかなつみさん
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イラストの柔らかなタッチを
硬い磁器で忠実に再現
柔らかいタッチで描く犬のイラストが人気のイラストレーター・てらおかなつみさん。2023年9月、中外陶園ではてらおかさんが描く優しさや温もりのある世界感を再現した、犬と猫の置物を制作しました。そこで、てらおかさんに初めての立体物制作についての想いをお聞きするとともに、多くのファンで賑わったSTUDIO 894での個展を振り返っていただきました。
瀬戸は行くたびに新たな発見が見つかる街
―多くのファンを魅了しているてらおかさんですが、イラストレーターになったきっかけを教えてください。また、日ごろの創作活動で意識していることはありますか?
小学2年生のころから大好きな犬の絵を描き続けているのですが、仕事として意識したのは図書館で借りた本がきっかけでした。その本の最後のページに、本の制作に関わった人たちの名前が記されているのを見て、表紙や挿絵を描く人をイラストレーターというのだと知り、私もイラストレーターになりたいと思いました。
日々の創作活動で気をつけていることは、自分の愛犬の絵を描きすぎないことです。私の絵を見てくださった方たちが、「うちの犬に似ている」と喜んでもらえるような犬の絵を描きたいと思っています。
―中外陶園との初コラボレーションにあたり、瀬戸にも足を運ばれたそうですが、実際に街を歩いてどのような印象を持たれましたか?
最寄りの尾張瀬戸駅から川沿いを歩いてSTUDIO 894に向かったのですが、瀬戸焼を販売しているお店が並んでいたり、橋や道に瀬戸焼の作品が飾ってあったり、瀬戸焼の歴史が分かる大きな施設があったりと、街全体がまるで瀬戸焼のテーマパークのようだと思いました。実はこの訪問をきっかけに、プライベートでも家族や友達を誘って行っているのですが、そのたびに新しい発見があって、瀬戸は私の好きな街のひとつになりました。
初めての立体物は理想を超える完成度
―今回、てらおかさんが描いた犬や猫が初めて立体物(置物)になりましたが、以前から立体物を作りたいという想いはあったのでしょうか?
これまで自分の作品をイメージ通りに作れる自信がなくて、立体物の制作はお断りしていたんです。でも、中外陶園の皆さんと初めて打ち合わせをしたとき、鈴木社長に私の作りたい立体物の想いを聞いてもらい、また中外陶園で丁寧に作られた作品を拝見して、お願いしたいと思いました。ちょうどそのころ、私は海外に向けて作品を発表しようと頑張っていたときでもあって、完成した置物を海外にも連れて行きたいなと思いました。
―イラストを立体化するにあたって、どのような点を意識して描きましたか?
私は3Dソフトを使ったデザインができないので、イラストが立体的に見えるようにいろいろな角度でイメージ図を描いて提出しました。そこで意識したのは、硬い磁器で柔らかな子犬の印象をどう表現できるか、また和室だけではなく、洋室にも馴染む置物を作ることでした。
―製作過程で中外陶園とはどのようなやりとりがありましたか? また、初めて試作品をご覧になったときの感想もお聞かせください。
私が描いた完成イメージのスケッチを見て、職人さんが形にしてくれたのですが、鈴木社長自ら、まだ窯で焼く前の柔らかい状態のものを新幹線で持って来てくれたんです。そこで、犬のおでこの膨らみや頬の膨らみなど、実物を見ないと分からないような細かい修正をお願いしました。
形が決まった後は、色のサンプルをいくつも作ってもらいました。どれも素敵な色で選べずに悩んでいたら、打ち合わせをしていた喫茶店のスタッフの方が『かわいい置物ですね』と声をかけてくださって……。とても嬉しかったのを覚えています。鈴木社長やデザイナーさん、職人さんたちが丁寧に形にしてくれたので、私の理想以上の置物が完成しました。
やきものの産地ならではの工夫を凝らした展示
―個展を開催したSTUDIO894の印象をお聞かせください。
STUDIO 894までの道のりや、その周りでも十分に瀬戸を満喫できたので、STUDIO 894が瀬戸の街の中心にあるように感じました。私が伺ったとき、たまたまSTUDIO 894の前を通りがった女性たちが「コーヒーも飲めるみたい!休憩しましょう」と、観光の途中で立ち寄られていたのが印象的でした。
両親と瀬戸に行ったときは、私も施設内で行える絵付け体験に参加させてもらったのですが、家族や友人ごとに机が用意されているので、リラックスした中で絵付けが楽しめたので、とてもいい旅の思い出になっています。
―個展「犬の絵展」を振り返って、どのような感想をお持ちですか?
STUDIO 894の個展は、私にとって初の愛知県開催でした。キュレーターの塚本太朗さんやスタッフの皆さんたちがとても見やすく、オシャレに作品を展示していただきました。特に、会場の中央に瀬戸焼を入れる昔ながらの箱でディスプレイ台を用意してもらったのですが、歴史ある陶磁器メーカーならではの演出だなと思って嬉しかったですね。STUDIO 894の個展は、かわいい置物が完成したことに加え、瀬戸焼絵付けタイルの作品もたくさん作らせていただいて、私にとって特別な展示になりました。
―瀬戸焼タイルの絵付けは初めての試みだったと思いますが、実際に体験していかがでしたか?
事前に絵付けしやすい画材を調べて提案してくれたり、窯で焼いた後の仕上がりや注意点を教えてもらっていたので、失敗することもなく、個展でお披露目することができました。工房の職人さんやデザイナーさんたちが優しく丁寧にサポートしてくれて、本当に感謝しています。
―今回、瀬戸焼絵付けタイルを拝見して、てらおかさんの作風との相性のよさを感じましたが、今回の体験を通してご自身の中で何か変化はありましたか?
以前より、焼き物の知識が深まったような気がして、美術館などにある陶磁器の展示作品を楽しく鑑賞できるようになりました。いつか、お皿やコップなど、実用的なものにも染付した作品を作ってみたいなと思っています。
Photographer:Hirai Saki
てらおかなつみ
1993年生まれ。フリーランスのイラストレーターとして活動中。 柔らかい線で描かれた犬の絵、動物の絵を得意とする。音楽アーティストのCDジャケットやグッズ、お菓子などのパッケージイラストや本の挿絵、雑貨デザインなどを手掛ける。作品集に「てらおかなつみ作品集 犬のいる生活」(玄光社) がある。展示も多数。
てらおかなつみオフィシャルサイト
https://www.teraokanatsumi.com
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