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2026.05.15
#インタビュー

Interviews Vol.13 オカタオカさん

陶板に描き出す、日常に寄り添う温かな情景

雑誌の表紙や書籍の装丁、ロゴデザインのほか、自らオリジナルグッズの制作も手がけるイラストレーターのオカタオカさん。動物や自然をモチーフに、ユーモアあふれる温かなタッチで描かれる作品は、見る人の心を自然と解きほぐす優しさがあります。今回、中外陶園とのコラボレーションにより、オカタオカさん自身にとって初の試みとなる陶板制作が実現しました。そこで、中外陶園の鈴木社長とともに、今回の作品に込めた思いをオカタオカさんにうかがいました。

多岐にわたる活動が新たな表現を生む

―今回、オカタオカさんにとって初となる陶板を手がけられましたが、この新たな挑戦を決めた理由を教えてください。

オカタオカさん(以下、オカ) 2025年に初めて磁器の絵付けに挑戦したのですが、そのときは皿やマグカップといった実用品が中心でした。今回は純粋に観賞用としての作品制作だったため、自分でも予測できないような、新たな気づきや発見があることを期待して挑みました。

―オカタオカさんは、これまでも紙に限らず、石や木などの素材に絵を描かれていますが、それはどのような思いからですか?

オカ 僕は常に「オルタナティブ精神」を持っていたいんです。その思いが、絵を描くだけでなく、友人とのポッドキャストやバンド、ブランド運営といった多岐にわたる活動の原動力になっていて、異素材を用いたアートワークもその一環です。こうした多角的な取り組みが、クライアントワークと個人活動の双方に良い刺激を与え合っていると感じています。

やきものの難しさと面白さを改めて実感

―今回の陶板制作において、特に意識されたことはありますか?

オカ 中外陶園から題材は任せていただいたので、モチーフは僕が日ごろからよく描く動物や自然を陶板に落とし込みました。一方で、焼成後の仕上がりが想像しやすいように、当初から色数を絞ることは決めていました。おなじみのクマの茶色をはじめ、呉須の青や黒、黄色やオレンジを選び、作品全体に統一感をもたせました。実は、僕は色に関して少し苦手意識があって、未だに「上手に使いこなせているかな」と思ってしまうんです。だから、あえて色数を絞ったことで、迷いなく筆を運ぶことができました。

中外陶園・鈴木(以下、鈴木) テストピースを拝見し、オカタオカさんが茶色を多用されていることが分かったので、瀬戸での制作時には数種類の茶色をご提案しました。その中には、「鉄絵具」という鉄分を多く含んだ絵具があり、オカタオカさんはその鉄絵具に挑戦されました。

オカ その鉄絵具のおかげで、より複雑で深みのある表情になりました。

―実際に絵付けをした感想をお聞かせください。

オカ テストピースの仕上がりを見て、塗りムラや筆跡が目立ったので「もう少し厚く塗るべきだった」と思いました。瀬戸での制作時に職人さんからのアドバイスもあり、塗り方や筆に含ませる絵具の量を見直したり、釉薬も透明釉からマット釉に変えてみたりしました。その結果、作品にぐっと奥行きが生まれて、釉薬の面白さを実感しました。

―普段の作品制作と比較して、陶板制作ならではの違いはありましたか?

オカ やはり「焼いてみないと分からない」という点ですね。絵付けの時点では手応えを感じていても、仕上がりを見て「これはどうだろう」と戸惑うこともありました。でも、時間が経つにつれて、「これはこれで味わいがあっていいな」と思えるようになってきました。僕の中で、表現に対する許容範囲が良い意味で広がったことに驚きました。やきものは、すべて自分でコントロールできないからこそ、難しさがあり、面白さがあるのだと思いました。

独特の奥行きをもたらす、やきもの特有の“揺らぎ”

―中外陶園の工房での制作はいかがでしたか?

オカ 普段は一人で制作しているので、職人の皆さんが静かに作業する空間に少し緊張しました。勧められるがまま、中外陶園の制服であるエプロンをお借りして絵付けしたのですが、後で制作風景の写真を見返したら、エプロン姿の自分がなんだか面白かったです(笑)。

鈴木 弊社の制服を着たオカタオカさんが、驚くほど工房になじんでいらしたので、私たちもつい嬉しくなってしまいました(笑)。

―オカタオカさんが絵付けされている姿を見て、職人の皆さんからどのような感想がありましたか?

鈴木 「迷いのない筆運び」と「真摯なまなざし」が強く印象に残っているという声が届いています。何より、同じ空気の中でオカタオカさんの世界観が紡がれていく光景は、工房全体に大きな刺激と一体感をもたらしてくれました。

―全31点の制作を終え、今どのような心境ですか?

オカ 普段のイラスト作品では出せない質感や表情を表現できたことが、純粋に嬉しいです。

鈴木 陶板に釉薬の厚みや焼成による「揺らぎ」が加わることで、平面に独特の奥行きが生まれます。それはイラストレーションの美しさとはまた異なる、磁器ならではの「生っぽさ」であり、それがオカタオカさんの世界観と見事に共鳴したと感じています。

オカ 「揺らぎ」っていい言葉ですね。

鈴木 オカタオカさんには、納得のいく表現にたどり着くまで何度も検討を重ねていただきました。私たちも、その真っ直ぐな想いに応えたい一心で、私たちが長年培ってきた経験の蓄積を活かし、共に歩ませていただいたと感じています。

新たな挑戦が次なる創作の原動力に

―今回の陶板作品をどのような方に手に取ってほしいですか?

オカ 今回の陶板は、玄関などに飾るのにちょうどいいサイズ感です。これまで絵を飾る習慣がなかった方でも手に取りやすいですし、この陶板が将来的に大きな作品に興味を持つきっかけになったら嬉しいです。

―2026年5月15日(金)から始まる個展「TOBAN TOBAN」についてお聞かせください。

オカ 今回制作した31点の陶板に加え、これまで制作した原画作品もご紹介できればと考えています。とにかくワイワイと楽しめる空間にしたいので、多くの方に足を運んでいただけると嬉しいです。

鈴木 さまざまな作品を通して、オカタオカさんの世界観に触れていただくことで、今回の陶板制作に挑んだストーリーもより鮮明に見えてくると思います。私たちも、今回の個展が次への取り組みにつながるような、意義のあるものにしたいと考えています。

―今後、新たに挑戦してみたいことはありますか?

オカ 今回の制作を経て、さらに新しいことに挑戦したいという意欲が湧いてきました。僕の周りのクラフト作家たちとも作品を作ってみたいですし、何より、中外陶園と一緒に立体作品に挑んでみたいです。

鈴木 オカタオカさんとの協働を通じて、ものづくりの原点にある熱量を共有できたことは、私たちにとっても大きな学びとなりました。次回はぜひ立体物に挑戦したいですね。


イラストレーター
オカタオカ

桑沢デザイン研究所卒業。鹿児島を拠点に、書籍、アパレル、広告など幅広い媒体にイラストレーションを提供するほか、ペインティングに加え、セラミックやウッドカットなど多様な手法で制作を行っている。近年は、鹿児島発のカーライフブランド〈HIGHWAY/南国灰道倶楽部〉を立ち上げるなど、その活動は多岐にわたる。2024年には音楽をテーマにした作品集『WALL OF SOUND』(ELVIS PRESS刊)を刊行。車と犬が好き。

オフィシャルサイト(Highway)
https://high-way.jp/
Instagram(オカタオカ):@okataoka

5/15(金)~6/28(日)開催 オカタオカ 個展「 TOBAN TOBAN 」詳細はこちらから